☆浮き足立つ

 
九月に入っても日差しは衰えないが
涼風が立つころになって
浮き立つ気持ちになるのは何故だろう
夏休みの宿題がやりきれていない遠い日の苛立ちが
幾重にも重なって未だに尾を引いているのだろうか
それとも
あの子に移した気持ちを逡巡したままでの
あまりにも永すぎた夏休みの遠い日の思い出が
幾重にも重なって未だに燻っているからだろうか
九月に入っても日差しを強く感じるが
涼風が立つころになって
浮き足立つ気持ちになるのは何故だろう
行く夏を惜しんでキリギリスが鳴いていた


あとひと月すれば
あなたは後期高齢者の仲間入りだと
役所が決めつけてくる
わたしに残された時間は計りがたいが
未だにやり切れていない宿題はあれこれある
これからも自分流にやってゆくしかないが
残された時間を考えると
やはり浮き足立つ気持ちになりもする
昼下がり聞き覚えのある勧誘の電話がかかる


厳しく長い残暑が続く今年
気がかりな友への残暑お見舞いの電話をかける
学生運動の仲間だった彼女はいまガンと闘っている
気弱な声で「大丈夫」というが
とても会って話す気力はないという
九月に入って涼風が立ついま
やはり浮き足立つ気持ちになるのだが
今日も日差しは強いまま
遠くで喧しく蝉が鳴いている


寝屋川市職員労働組合機関誌「こだま」253(2008年10月)号掲載の絵と詩
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