★『平池橋からアドバンスを望む』(「こだま」1999年10月号 No.217)*3

『平池橋よりアドバンスを望む』

 寝屋川に架かる平池橋から市駅の方向を望む図である。奥の大きな建物が、アドバンス2号館であり、右の黒い屋根の建物が消費者センター。
この絵が、「こだま」に掲載し始めた最初の絵である。
 平池橋より北に300m余くらいのところに極楽橋があり、その両橋の間がわが小学生頃の格好の遊び場だった。用水路で泳ぐか、この川で、雑魚捕りに夢中になるかだった。勿論、絵のような護岸工事はなくて、寝屋川も自然のままに流れていた。
 川には魚や亀、蛙が泳いでいた。アメンボやミズスマシ、ゲンゴロウがいた。バッタやカマキリ、トンボやヤンマがいた。ときに、蛇が横切るのに出会ってちょっと驚いたりもした。土手には、農耕牛がつながれていて草を食んでいた。
 ここら辺りの土手には、松が並んで生えていた。戦争がすすんで松が倒され、府営住宅が立ち並んだ。
 わが家で飼っていたアヒル十数羽を、朝、追って家を出るとガアガアいいながら、一列縦隊になってむらなかを歩いて寝屋川にたどり着き、土手を転がるように川へ走りこむのである。放っておくと夕方近くまで川を上下しながら、適当に餌を漁っていた。誰もアヒルを取ろうなどと考える人などいなかったんだ。夕方迎えに行くと、こちらの顔をちゃんと知っていて、川から上がり、また来たときと同じように一列縦隊になって、ガアガアいいながら、先導されなくとも家まで帰ってくることができた。
 平池橋に立つとそんな昔のことが思い出される。昭和も次第に遠のいて行くんだ。
 いまの寝屋川は、ガードレールとフェンスで囲まれ、コンクリートと鉄材で固められ、よそよそしく流れている。人を寄せ付けない川となってしまっている。悲しいかな、である。昭和もまた遠くなりにけり、だ。