☆反戦の詩人 井上俊夫さん死去(朝日新聞10月16日夕刊記事より転載)

「中国の従軍体験から、戦争に反対する作品を書き続けた詩人、井上俊夫(いのうえ・としお、本名中村俊夫<なかむら・としお>)さんが16日午前2時10分、大阪府寝屋川市の自宅で肺炎のため死去しました。86歳だった。通夜は16日午後7時、葬儀は17日午前11時から同市中木田町25-10の自宅で。喪主は長男俊春さん。
 同市の農家に生まれた。42年に徴兵され、中国で飛行師団の気象部隊に所属。戦後、中国の捕虜収容所で1年過ごし復員した。寝屋川町役場に勤務しながら、農民運動、労働運動に加わった。肺結核で入院中に作詩を始め、57年、30編を収めた詩集「野にかかる虹」でH氏賞を受賞した。
 詩集「従軍慰安婦だったあなたへ」、エッセー「わが淀川」など。著書「八十歳の戦争論」では、軍隊生活について赤裸々につづった。06年、日本現代詩人会の先達詩人に選ばれた。
 体験に基づいた強さ・・・・・・・・・・詩人・杉山平一さんの話
 井上さんの詩や文は自分の体験に裏打ちされた強さがある。戦時中の中国で捕虜を殺した体験を書いたものを読んだ時は衝撃を受けた。愛国少年だっただけに、国家のうそが許せなかったのだろう。生涯、孤立しても、反戦の姿勢を貫き続けた。照れ屋で頑固。寝屋川の農村に生まれ、大阪の風物に目を向けた暖かい詩は、いまも印象に残る。詩人として尊敬していた。」
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