★今日は母の祥月命日

 母は、1996年1月に、86歳5ヶ月で亡くなりました。今日が祥月命日です。昨年の8月2日の生誕日で、生誕100年でした。
 政治志向で、人のためにと社会活動に生きて、58歳で亡くなった父に寄り添うように生きました。晩年は、少し痴呆症にもなり、妻に世話を掛けた末、3週間ほどの入院で亡くなりました。
 その年の暮れに、喪中のはがきを出したときに綴った詩を再録して、母の冥福を祈ります。


扇風機、目覚まし時計、アルバム、
衣紋掛け、針箱、アイロン、こたつ、
温風器、小物入れの箱などが
色とりどりの毛糸、紙紐、
ビニール紐、木綿糸のどで
ぐるぐる巻き付けているのが
母の押し入れから見つかった。


一月十日の朝だった。
酸素吸入の管を引きむしったその手を突き出して
「愛子さん、頼むから紐おくれ」とせがんだ。
長引くと覚悟したその日の夕食後、
病院からの呼び出しに駆けつけたが
母は胸元で両手を組み白い布を被せられていた。


きっと紐を探すために旅に出たに違いない。
巻き付けておきたいものが、まだあったのだろう。
それが何であったのか、聞き質さないままになった。
ベットの上から「愛子さん」を呼び、探し、
頼み事を繰り返していた老いた母が
両の手からこぼれ落ちるように
紐探しの旅にひとり急ぎ旅立った。
母はその旅からもう帰ることはない。
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